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節税だけではない!忘れてはいけない大切なこと
『相続税はできるだけ安くしたい!それが一番!』
相続業務をする中で、このようなご要望をよく耳にします。
やはり、節税に関するご要望が多いのは事実です。
しかし、そのご家庭により、何を優先させたいのかで、【一番】が違うのも事実です。
先日のご相談では、ご主人、奥様、それぞれから
おひとりのお子様に全ての財産を相続した場合の相続税額を知りたいとの事でした。
そこで、現在お持ちのそれぞれの財産から次のような内容で相続税の概算を致しました。
① ご主人が先にお亡くなりになった場合の相続税額
1. ご主人の財産→全てをお子様へ相続 (一次相続)
2. 次に奥様が亡くなり、奥様の財産→全てをお子様へ相続 (二次相続)
② 奥様が先にお亡くなりになった場合の相続税額
1. 奥様の財産→全てをお子様へ相続 (一次相続)
2. 次にご主人が亡くなり、ご主人の財産→全てをお子様へ相続 (二次相続)
結果は、ご要望のとおり、ご主人、奥様、それぞれからおひとりのお子様へ全て相続する事が
税額は一番安い結果となりました。
ただし、相続税額だけに着目したこの場合、配偶者が受け取る財産は0円です。
残されたご家族は、もし自分のお手元には財産が全く残らないとなれば
この先を考え不安になることもあるのではないでしょうか。
もしかすると、その事実に対し怒りや悲しみを感じることもあるかもしれません。
確かに、財産を配偶者の方へ半分残すと仮定した概算では、
お子様おひとりに相続する場合より相続税額は1.5倍になり
配偶者の方へ30%相続すると仮定した概算でも相続税額は1.3倍になります。
それでも、残されたご家族が不安を感じないほどの財産をそれぞれに残す事ができます。
この結果をどのようにとらえるかは、様々だと思います。
税額だけで判断するのではなく、残された家族への思いやりを大切にしたことで
争族を防ぐことにつながることもあるのではないでしょうか。
相続には色々なかたちがあります。
税金の高い、安いだけではない心情に寄り添う相続のかたちが
これから求められる大切なことのひとつだと思います。
(執筆者:中野 樹里)